はじめに
今回はパソコン製造に新規参入する日本企業がいると仮定して、その5フォース分析をします。
そもそも5フォース分析とは
業界を5つの視点から分析します。
その5つの視点は、
・競争業者の脅威
・新規参入の脅威
・代替品の脅威
・買い手の交渉力
・売り手の交渉力
です。
競争業者の脅威
パソコンを製造している日本企業は、パナソニック、dynabook、VAIO、MOUSE等、限られています。
「あれ、富士通やNECは、パソコンを製造している日本企業に当てはまらないの?」という疑問が出るでしょう
そうなんです。富士通やNECは、今は、レノボグループが主導でパソコンを製造しています。
日本でパソコンを販売する企業は、日本企業だけではありません。
海外のパソコンメーカーも、日本国内でパソコンを販売しています。
例えば、中国のレノボ、台湾のASUS、アメリカのDELLやHP、Microsoftなどです。
競争業者は、非常に数も多く、資本力も桁違いの大物ばかりなので、競争業者の脅威は非常に高いと言えます。
新規参入の脅威
次に、新規参入の脅威について考えてみましょう。
新規参入とは、その事業を新たに開始することです。
パソコン製造事業を新たに開始しようとすると、工場やその土地、技術や販売ルートなどが必要ですよね。
よって、新規参入は非常にしづらい業種であると考えられます。
しかし、ある方法を使えば、工場やその土地や技術が必要なくなくなるのですが、それは、後の章で、少し述べますね。
代替品の脅威
代替品とは、その製品(今回はパソコン)の代わりになる製品のことです。
パソコンの場合では、スマホやタブレットがイメージしやすいのではないのでしょうか。
近年では、個人の使う機器と言えば、パソコンよりも、スマホやタブレットですよね。
また、企業でも、高度な作業を必要としない職種では、パソコンをタブレットやスマホに置き換えることも可能ですよね。
よって、代替品の脅威は非常に高いと考えられます。
売り手の交渉力
パソコン製造業における、売り手とは、CPUを売ってくれる企業やディスプレイを売ってくれる企業です。
その交渉力(どれほど高く売る力を持っているか)は、高いと考えられます。
特に、パソコンの頭脳とも例えられる、CPUは、パソコンにおいては、IntelとAMDの寡占状態(少数企業のみで大半を販売する状態)です。
また、映像を出力するGPUは、AMDとNVIDIAの寡占状態です。
そのような寡占状態にある業界は、企業間の価格競争が起こりづらく、そこから仕入れをしなければならないということは、高い価格で仕入れなければならない可能性が高いということです。
つまり、売り手の交渉力は高いと言えるでしょう
買い手の交渉力
買い手の交渉力(買い手がどの程度価格に対して敏感か)はどうでしょう。
パソコン製造業者から、パソコンを買うのは、卸売業者や大手小売業者です。
それらの業者は、他のメーカーとの価格を比べて、安かったり、売りやすかったりしなければ、買ってくれません。
つまり、それらの業者は目が肥えているのです。
よって、買い手の交渉力は高いと言えます。
また、最近では、D2C(製造業者から直接顧客に販売すること)に取り組む企業も増えています。
特に、パソコン業界では、DELLが始めた、BTO(Build To Order : 受注生産)を採用している企業がたくさんあり、インターネット上で、簡単に、性能と価格の比較ができるようになっています。
同じ性能であるならば、安い方を買いたいと思う人が多いので、他社と同じ水準や、他社よりも安く売らなければなりません。このことからも、買い手の交渉力は高いことがわかります。
補足:新規参入の脅威で述べた、工場や土地や技術が必要ない製造方式について
一般的には、製造業では、2つの方式があります。
1.工場と土地をもって、製品の製造を行う企業
2.工場と土地を持たずに、企画・開発を自社で行い、製造を他社に委託する企業(ファブレス企業)
1. の工場と土地を持って、製品の製造を行う企業は、皆さんがイメージする通りの製造業です。
では、2. の工場と土地を持たずに、企画開発を自社で行い、製造を他社に委託する企業とは、何でしょう。
工場を建てたり、土地を所有するのには、莫大な資金が必要となります。
なので、自社では、製品の企画・開発のみ行い、その後の製造は、他社に委託します。
このようにすることで、小さな元手で、製品を製造することができます。
工場を持たないので、ファブ(工場)レス企業と呼ばれます。
パソコン製造で考えてみると、「初めに」の項で述べた企業は、ファブレス企業ではなく、自社で生産している企業が多いです。
パソコン製造でファブレス企業的に、活動している企業を紹介しますね。
・アップル(Apple)
皆さんご存じ、かじられたリンゴのマークで有名なアップルです。アップルでは、 Macシリーズの製品の企画・開発を行いますが、製造は、中国などにある提携工場に委託しています。
まとめ:パソコン製造業の現状
パソコン製造業に新規参入する日本企業がいると仮定して、パソコン製造業を、5フォース分析してきました。
分析の結果をまとめると以下のようになります。
・競争業者の脅威 → 非常に高い
・新規参入の脅威 → 低い
・代替品の脅威 → 非常に高い
・売り手の交渉力 → 高い
・買い手の交渉力 → 高い
まとめてみると結構、儲からなさそうな業種ですよね。
では、現状を見ていきましょう。
2003年 SONYがパソコン事業 であるVAIOを分離独立
2005年 米IBMがパーソナル・コンピューター事業を中国のLenovoに売却
2008年 富士通が、パソコン事業をFCCLへと分離独立
2011年 NECが、Lenovoとパソコン事業の合弁会社を設立
2016年 富士通が、レノボへFCCL株式の51%を売却
2020年 東芝が、シャープへ、パソコン事業であるDynabookを売却
このようにみると、日本のパソコン事業が、どんどん縮小していることがわかります。
日本企業が、パソコン事業を買収される事例は、たくさんあるのですが、日本企業が、海外のパソコン事業を買収するという事例は、ありません。
VAIOは、日本企業から、日本企業へと事業が売却されています。
パソコン業界は、縮小傾向であるにも関わらず、頑張っている日本企業を応援したいものです。
とは言いつつも、5フォース分析の結果を見ると、パソコン事業からの撤退は、合理的なことで仕方がないという側面もあります。


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